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ミシュランシェフが「ほしのバター」に込めたおいしさへのこだわりとは
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ミシュランをはじめ、名だたるレストランガイドで高評価を獲得する日本料理店「御料理まつ山」の店主・松山照三さんが監修する菓子店「ほしのバター」が、2024年5月27日(月)にコレド室町2 B1にオープン!
その最大の特徴は、熊本・小国のジャージー牛のバターを贅沢に使用していること。ジャージー牛は、一般的なホルスタインと比べて乳量が少なく、飼育や搾乳に時間がかかるため、全国の牛乳の中でシェアは1%未満にとどまります。さらにバターとなるのはその1%だけと、かなり希少な食材です。
今回は「ほしのバター」に来店した松山さんに、商品に込めたこだわりから料理に対する思いまで幅広くお話を伺いました。 -
「ほしのバター」をはじめたきっかけ
僕は生産者と距離が近く、熊本・小国のジャージー牛乳を初めて飲ませていただいた時にすごく感動して、この牛乳を使ってアイスクリームを作りたいなと直感したんです。そこで北九州でアイスクリームの専門店をはじめました。「御料理まつ山」でもデザートに使えますしね。
そして小国では基本的に、ジャージー牛乳を使ったチーズや生クリーム、バターなどの加工品は市販されていないのですが、業者向けに作られたバターを試食させていただいたところ、やっぱりすごくおいしかったんです。
本来なら生産者たちがバターや生クリームを作って、全国に売っていくともっと価値が高まっていくんですけど、やっぱり機械の費用や、バターを作る際の副産物であるホエイの処分費用などが問題になってくる。でもこれから「ほしのバター」が東京で話題になれば、地元でもジャージー牛乳をもっと有効活用しようと盛り上がってくるはずで。そこが僕のひとつの狙いでもあるんです。 -
「ほしのバター」という名前とロゴについて
名前については、「松山さんはミシュランで星を獲得されているので“星”を屋号にいれたい」と提案をいただきました。でも、料理人はレストランガイドなどで評価され、有名になっていきますが、生産者にはなかなかスポットライトが当たらないんですよね。だから「ほしのバター」に関しては、僕ではなく生産者の方々に注目をしてもらい、星をあげたいなと思っています。
ロゴーマークは、バターの頭文字のBが2つ重なって、星が浮かび上がっています。色味もバターを意識しているということです。 -
「ほしのバター」の商品ラインナップ
あんことバターの組み合わせは絶対に間違いないので、個人的にどうしても作って食べてみたくて(笑)。実際に作ってみたらめちゃくちゃおいしかったので、「あんバターどら焼き」と「あんバター最中」の2品を発売することとなりました。
こだわったのは、あんことバターのバランスです。僕は常温で、中のバターが少し溶け出しているところがたまらなかったんですが、我が家の長男は冷蔵庫でしっかり冷やしたほうが、バターがしっかり味わえておいしいと。温度で味わいが変わるのも面白いなと思います。
「あんバターどら焼き」は、皮をもっちりした食感に仕立てて、餡との一体感が楽しめます。「あんバター最中」は、餡が求肥にくるまれていて、それを食べる直前に最中の皮で挟むことでパリパリの食感に。自分で仕上げるひと手間が、大人の遊び心をくすぐってくれます。最中は斬新だと思うので、個人的にもぜひ一度は召し上がっていただきたいですね。
さらに、オープン時の限定商品であり、「御料理まつ山」にお越しになった方にお土産としてお渡ししているバターサンドも、好評を受けて1日20箱限定で販売することになりました。バターサンドで「〇〇バター使用」と書いてあっても、クッキー生地には違うバターを使っているところも少なくないのですが、こちらはバタークリームはもちろん、クッキー生地にもジャージーバターを使用。その分原価は高くなりますが、おいしさが全く違ってきますから。
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料理人としてのモットー
「50点の食材を100点にするのが料理人だ」とよく言われるのですが、僕は「100点の食材を120点する」のが本当の料理人だと思っているんですよね。だから、「ほしのバター」は 普通のどら焼きと最中で、映えの要素は一切ないんです。それでも絶対においしいっていうのが大切なので。
100点の食材に出会うためには、お客さまの声にもアンテナを張っています。お店に来てくださるお客さまは舌のこえた方ばかりで、僕よりもいろんなことをご存知なので、そこから得られる知識や情報は大きいです。そして僕はおそらく、他の料理人と比べても、おいしい食材を求めてかなり歩き回っているほうだと思います。 -
若い料理人へのメッセージ
昨今、料理人になりたい若者が少なくなっているんです。収入と労働時間のバランスや効率を考えるんでしょうね。
以前、若手の料理人さんに「料理人を目指すなら1店舗で有名店になるより、居酒屋さんを複数店舗営業した方が収入の面でも自分の時間という部分でも良いですよね」と言われたことがあります。
しかし、有名店だからこそいろいろな仕事をいただくことができるし、「ほしのバター」のような監修もできるわけで、そういった意味でも僕は仕事の幅を若い料理人さんにも示していきたいなと。40歳を過ぎて、中堅と呼ばれるようになってきたからこそ、若い世代にも目が向くようになってきました。僕の地元の若い料理人さんに、「なんでもっといろいろ聞いてこないんだ?」と聞いたことがあるんですよ。そしたら僕は強く映るみたいで、話しにくいと言われて(笑)。
僕自身、若い頃は有名店にどんどん行ってお土産を渡して覚えてもらって、SNSのDMで「このメニューがすごくおいしかったんですが、どうやってつくってるんですか?」と聞いたものです。そうすると皆さん、結構教えてくれるんですよね。僕も本当は怖くないからどんどん聞いてきてもらって大丈夫です(笑)。
若い子が色々なことに希望を持って育っていってほしいと思います。